
そして、このキットが私の中で御意見無用の一番星の最良の資料になるのではないかと思っている。
社会人なってVHSを買うまで、ポスターに映る姿とカミオンに出ていた小さい写真だけが頼りで
映画そのものも地上波で見る機会も少なく、御意見無用の一番星は私の中で謎の存在であったのだ。
だが雑誌の小さい写真でもインパクトは物凄く、イエローとシルバーのキャビンに熊の箱絵に荷台の星・・・・
とにかく二代目以降の一番星とは違う佇まいがなにより衝撃であったのだ。
(子供の頃ふそうのT9系は相当古いトラックという印象が強かった事もある。)
今は映画もリマスターされているので静止画などでディティールが確認できるようになったが
キット化までへの道程は桃さんの恋のアタックや最後の爆走シーンのような大変さがあったと推測される。

映画の話になるが「御意見無用」はなんといっても処女作特有の荒削りさが魅力だと思う。
要所要所で短期間での撮影や低予算っぷりを感じるが
その中でも制作陣が最善を尽くしたような雰囲気があり見ていても解るような迫力があるのだ。
それらが合わさり任侠映画のようなダークな雰囲気と娯楽作品の間のような雰囲気というのだろうか?
かと言ってその後のシリーズと全く違うわけでもなく、トラック野郎シリーズの基本が出来ているのが印象的だ。
桃さんも相変わらずのマドンナへの惚れっぷりやきっぷの良さであるがちょっと荒っぽく
ジョナサンもその後の感じと違い少しラフな感じでコミカルだったりする。
しかし元警察官のジョナサンのパトカーが飲酒運転でクビになったくだりや
警官への未練があるような描写にその後の葛藤の後の行動。ジョナサンが背負っている物も大きいのだ。
その後の作品では徐々に元警察官であるという設定は薄れていき
「一番星北へ帰る」で出てくる二代目花巻の鬼台貫でその辺のくだりがまた出てくるが
御意見無用の時と一番星北へ帰るのときでは明らかにジョナサンの想いが違うように感じるのだ。
トラック野郎といえばライバルとの喧嘩やバトルシーンであるが
桃次郎と関門のドラゴンとのライバル同士のバトルシーンはその後の作品に比べると
電飾も少ないしそこまで派手なバトルではない。しかし妙な迫力とハラハラ感があるのが不思議だ。
暗い道で光っている時マーカーランプやアンドンが少し暗いせいもあるのだろうか?
なんとなく哀愁も有り、街灯も少ない時代の夜の街道筋の勝負はこういう感じだったのかと想像させる。
低めのカメラアングルに上半身裸の桃さんと助手席の千吉が小便をちびったり
要所要所で震え上がっているのもそれに拍車をかけているような気がする。
それにしてもキットを見ていると「こういう感じだったのか~」と思う事が多い事に改めて驚かされる。
よく見ていると気づくのだが「あの時のあのキットのパーツはまさかこのキットのために!?」が非常に多い。
以前あるキットのランナーに「GKM」というタグが付いており、良い意味での「匂わせ」にグッと来ていたので
こうやって実際にキット化されるとなんとも感慨深い思いである。
詳しいパーツの解説や考証は出来ないが既存のパーツだけではなく新規パーツの多さには感動である。
大きいスピーカーに塚本屋の泥除けにメインアンドン上の唐草飾りに手すり類やマーカー・・・・
各所に散りばめられた星の飾りも御意見無用の一番星っぽい。
またリアバンパーの帆船のレリーフは黒幕氏が実物を入手されたそうでそう見ると感慨深いパーツである。
その他にもドア窓下の「超高速冷暖房車」にグッと来てしまい思わず涙ぐんでしまったのは内緒である。
御意見無用特有の緑ナンバーに一般の表示・・・・・このあたりもまた味わいである。
(ちなみにポスターなどは白いプレートになっている。)
ちなみに劇中ではスピーカーが付いていない時があったりランプの唐草飾り等が
装着されていないシーンがあったりするのでマニアックな方は映画をチェックされてみてはいかがだろうか?

内装の生地や小物類などもデカールではあるが再現されているのが嬉しい。
カーテンもシワが再現されているのでそのままでも雰囲気が出ると思うが
プラバンにティッシュなどを貼ったものの上に貼ったりすれば布感が出るし
その後軽くつや消しクリアなどを吹いてトーン落とすとそれっぽいかも知れない。
またピラー部などに張り込まれている独特の模様の生地などもデカールに入っているし
寝台部分の小さい仏壇などの小物はプラバン等で少し厚みを持たせてあげるだけでも更にそれっぽくなると思う。

個人的に車検のシールは少し斜めに貼ると劇中車っぽくて良いので是非参考にしていただきたい(笑)
(余談だがカムチャッカ号はなぜか三枚並んでいるが割とバラバラに貼られているのがナウいのは内緒)

個人的に好きなディティールがあるのだがベース車両であるT951Nのパネルバンが出た時にも気になっていたが
荷台前面の上部のマーカーの台がそのまま残されている部分にハァハァしてしまう(笑)

御意見無用の一番星が急ごしらえで制作されたということを表している感じがして好きなディティールであるので
実はT951Nパネルバンが出たときから「もしかしたら・・・・」と思っていた部分でもあった。

サイドバンパーやハシゴなども新規に起こされている。
後付のアンダーミラーなども抜かりはない・・・・素晴らしい。
余談だが御意見無用の一番星は急ごしらえと言う割に
当時のデコトラカルチャーを感じ取ることが出来る飾り方だなと改めて思った次第だ。

シャンデリア(蛍光灯)やチェーンフックなども新規に起こされていて気になるパーツではあるが
マイクなどダッシュボード周辺の新規パーツであろう。
このブログ的にピックアップしてみたいのはダッシュボード上のテレビである。

当時まだ白黒テレビだって残っていた時代、自宅でも相棒でもある一番星のキャビンの中で
ビールを飲みながらカラーテレビで楽しそうにストリップ(というよりヌードダンス?)を見ているシーンがある。
少し寂しくも楽しそうでもあり、私も桃さんのような男になりたかったと思わず思ってしまう。
そしてこのテレビに貼る指示がある部分のデカール(メーター脇の104番のデカール)は
おそらくあのシーンの物ではないかと思うのだがいかがだろうか?
その後のシーンで九州のお土産を持って現れたモナリザのお京とのやり取りは
現代日本ではギリギリのラインの下世話なやり取りが感じがなんとも小気味好いのだ。
お京は「スケベ!あんたとは違うばい!」という粋な返しがカッコよくもある。と言うか最高にカッコいい。
御意見無用ではマドンナは洋子だがヒロインはモナリザのお京であると私は思っている。

赤枠のナンバープレートもこれまたマニアはたまらない。
ダッシュボードに貼る星も少しズレているのが芸が細かすぎて思わずびっくりである。
このあたりはもはや執念すら感じる再現でもあるがこういうのが嬉しかったりもする。
是非爆走一番星を出す時はダッシュボードのタコグラフステッカーも再現していただきたい(笑)
荷台はアオシマの一番星シーリーズに倣い、パネルシール用のクローズドボディも新規で起こされている。
今の私にはデカールを張り込むテクニックがあるかは不明であるがこういうのもありがたいし
特徴的なフロントのカモメ型塗り分け用のマスキングなども今風のキットの素晴らしさを感じる。
キットが高額になっている分、こういう部分で補ってくれるのがアオシマ流のきっぷの良さであろうか?

メタルシールもやはりデコトラのキットにはこういう表現が効果的であると感じた。
ドア下の装飾パネルはもちろんだが、荷台のパネル部に取り付けられたマーカー付きの星の装飾。
シンプルであるが迫力のある熊の絵に空に浮かぶ星が光るというというデコレーションは
まさに御意見無用特有のディティールでもあり思わずニヤついてしまう。
個人的に思うのだがあの星の飾りのマーカーは荷台の構造や位置的にも
荷台に直に穴を開けて配線をしたように思うのだがそう考えると色々な意味で恐ろしい(笑)
さてさて、ざっくりであったがいかがだったろうか?
本当はご紹介したい部品はかなり多いのだが個人的に気になった部分をクローズアップさせて頂いた。
待望のキットに私自身も圧倒され、キットを通じトラック野郎の魅力に改めて気づいたというのが正直な感想である。
大げさかもしれないがトラック野郎の世界には義理や人情など今の日本人が忘れている事が多く描かれている。
もちろん時代にそぐわない描写もあるし、現代ではありえない事も多いだろう。
しかし「きっぷの良さ」や「誰かのために損得無しで行動すること」などは今でも通用すると思う。
でもトラック野郎に影響を受けたとい割に、ケチくさい私はまるで千吉のセリフではないが
「バ○屋のボロリアカー!」のようで桃さんの足元にも及んですらいない小さい男である。
そんな私もトラック野郎を見ると不思議と元気が出て小さいことでも頑張ってみたくなるのだ。
そう考えるとトラック野郎は私のような寂しい男への応援歌でもあると感じる。
そして何よりこのアオシマのキットはそんなトラック野郎ファンに送るブルースだと思うのだ。
御意見無用ラストの爆走シーンで洋子が運転席にある「はまなすの花」を見て桃次郎の想いに気づくように
私もこのキットを見て送り手の皆様の想いを感じ取った次第である・・・・
デリバリー直前の箱詰めの動画を見て思わずワクワクしてしまったのは私だけではないはずである。
そしてあの時映っていたキットはもしかしたら私の手元に来てるかも知れないキットかと思うと目頭が熱くなる・・・・
「そんなことで・・・」と思う方もいるかも知れないが私はそういう人間である。
そして最後にこの記事を見ていて下さっている方も予約されていた方は手元に届いた頃であろう。
未入手の方は早めに模型店に行かれてみてはいかがであろうか?
もちろん店員さんへの支払いの時はは腹巻きから1万円札を出して
「チップだよ!ほんのタバコ代だ!」と粋にお金を出すこともオススメしたいと思う。
支払いがちょっと足りない気もするがこのキットを買う時は桃さんのようにきっぷの良さを大事にして欲しいと思う。
もちろん私は予約はしていたが、しっかりお釣りを頂いてきちんとポイント還元までしてしまったのは内緒である。
私が桃さんのように度胸もきっぷの良さも持った男になれるのはいつになるのだろうか・・・・・・